GIGAZINE「ある日突然自分の建物を破壊されて…」の真相

GIGAZINEの倉庫にしていた家屋がいきなり破壊されたそうです。

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とても衝撃的な話のようですが、本当にこんなことあるんでしょうか。当該記事でも書かれていましたが、いきなり昭和の立ち退きのようなことをこのご時世で行うとも思えません。

記事のどこにも「土地を所有している」とは書かれておらず、地上権のみのようです。当該物件の周囲が駐車場になっているので、この記事読むだけでもうっすらと地主の方と軋轢があったんじゃないかなと感じるのですが…。どちらの観点に立つかで、意見は変わるのかもしれません。

トラブルの発端は30年以上前に遡る

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経緯は中の人のお母様がブログに記録されております。

会社と言っても、父がが経営していた商店であるが、父のこの建物に関しての取引は、私が結婚して家を出てからのことであるので立ち会ったことがない。しかし、実家に帰るたびに父は晩酌をしながら地主に関しての愚痴をくどくど話していたのをよく覚えている。

その内容は、「あの家は全部俺が金を払ったのに、地主は違うといって地代を払えと仕事場へやってきては客や従業員の前で言い続けた。それで根負けして地主にお金を払い会社の商品の倉庫として使っていた。弁護士に相談して話し合いをつけるつもりだ。」というものから、少し経つと「あの土地はやっと俺のものになる。正義は勝つ。」などと言って泣いていたのをよく覚えている。ガンで亡くなる直前には、「あの建物を使うときだけ地主の婆さんがうるさいから金を払ってやれ。使わないなら払う必要はない。」と言っていたのである。その時は何かよくわからないままに、いやいや愚痴に付き合っていたというのが事実であった。今にして思えば。もっと詳しく聴くべきだったと悔やまれる。後悔先に立たず。

今回の事件で法務局へ行って初めて知ったのは、「地上権の登記」ということと、「建造物の滅失登記」ということである。大事なのは書類だけで、書類さえ揃っていれば法務局は受けざるを得ないということであり、解体屋が建物を取り壊してしまうと地上権のない建物の権利はすべて消滅するということである。警察も法律に則って仲介の不動産会社が解体屋に依頼して作業をしていると言われれば止めることは出来ないということであった。事前に知らせようとしたが連絡が取れなかったというのが仲介会社の言い分であり、地主はこの建物は地代を払わないから返してもらったと主張する

お爺様は「地上権=地代は払わなくてもいい」と考えられていたのかもしれません。地主さんが地代を請求したところ、「根負けして」支払うようになった。さらに「使わないときは払う必要ない」とまで仰っていたようです。

地主さんは「地代を払わないから返してもらった」と主張していることから、現在も地代は支払っていないようです。

 

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昭和50年代だと、今とはかなり事情が違っていたらしい。それでも、地主と建物の所有者が違う場合、いくら28年間も売り主が住んでいたとはいえ建物だけを黙って売ることは出来ないので地主の許諾を取りに行ったそうである。建物だけの売買のこの場合、建物には地上権が付いていたという事であると契約書を作って売買に立ち会った司法書士は保証してくれた。


それでやっと父があんな小さな建物にかなりの金額を払ったことがよくわかったのである。地上権の登記は地主側にその義務があるが、買い主側は自分では出来ない。それで父は怒っていたのだということがわかった。
そこで父は、20年計画を立てて、20年後に登記してもらうことを地主と約束したようである。確信はないが、父の愚痴を聞かされていた限りではそうなるのかなあと思う。その後20年間、父は税金を払い火災保険をかけ続けたのである。地代も払えと地主から言われ、地上権を確保するためにそれも実行していたのである。そして、がんに侵されていたた父は、やっと20年目に言われるまま再びお金を払ったらしい
これでやっとこの土地の地上権を確実に手に入れたと思ったが父ではあったが、やはり地主は地上権の登録を無視したようである。ガンの末期にまで進んでいた父は、裁判をする気力もなく、その後まもなく他界してしまったのである。


父は最後に、その問題の不動産を寿命の長い私の息子に託したのである。あちらこちらに「この家は壊すな。この家は地主に返すな。」と書いたものが出てきて、実際にも私や息子に「この土地は永遠に俺のものだ。」と言いながらこの世を去っていったのである。

地主さんの見解が分からないので一方的ではありますが、この件は結局のところGIGAZINEの中の方のお爺様が、地上権付きの物件を28年住んだ第三者から購入したが、想定と違っていたというのが事の起こりではないでしょうか。

「かなりの額で」購入したのに、まさかの地代がかかる。でも上物にはかなりの投資をしちゃってる。税金とか火災保険もこっち払い。なにそれ?

――この怒りが「家は壊すな」「この土地は永遠に俺のもの」という呪いになったのだと思います。 

 

普通に考えると、土地は地主さんのものなので地代はかかりますし、上物にかかった固定資産税や保険料は所有者が払うのが当たり前ですが、この辺の認識の違いが、今回の騒動に繋がっているように思います。

地上権と地代の支払いをきっかけに関係がこじれる

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【地上権】
・地上権の場合は、絶対的な物権なので売買や相続や抵当権など一切地主との承諾はいらない。
法定地上権が認められる時には、土地の評価の6~7割の部分が法定地上権の部分として土地所有権の評価から減額され、建物の評価に加算される。
・取得時効を主張する場合、占有者は「所有の意思」に基づき、「善意」で、「平穏かつ公然」に占有していることを立証しなければならない。取得時効を主張する者は、20年間の取得時効の場合、その始めと終わりの時点において自分が占有していたことを、10年の取得時効の場合にはそれに加えて、自分に所有権があると信じたことについて不注意な点がなかった(無過失であった)ことを主張立証すればよい。

この3つの条件を、前の建物の所有者(27年間)も父(24年間)も孫(13年間)も満たしているのである。

 

この物件をお爺様が購入したのは37年も前の話のようです。

これは推察でしかありませんが、もともとは善意に基づいた契約だったのかなと感じます。地主さんに有利な賃借権ではなく地上権を選択している点や、地主さんの許諾なく物件の売買ができるにもかかわらず、物件の売り主さんは地主さんの合意のもとにお爺様との契約を進めています。売り主さんは28年も住んでいたそうなので、地主さんとの関係性は良好だったのではないでしょうか。

物件が建ったのは60年以上も前の話なので、常識の範囲内で緩やかな土地運用をしていたのかもしれません。地上権を設定しても、木造なのでいずれ壊れるしね、という認識だった可能性もあります。

 

お爺様が買った際に、地主さんが地上権の登記をしなかったことと、地代を払わなかったことをきっかけに、信頼関係が崩れていきます。ひょっとしたら、地主さんは売買契約時は地上権の登記をするつもりでしたが、何度も督促するまで地代を支払わなかったので、危うさを感じて地上権の登記をしなかったのかもしれません。

 

なぜ強硬手段に及んだのか?

家はGIGAZINEの中の方が相続されたとのことで、お爺様の教えを守り、壊すことなく13年間倉庫に使っていたようです。会話をすることなく強硬手段に至ったのには、この辺が理由のような気がします。

  • 地代を払っていなかった
  • 当時を知る地主さんが代替わりした
  • 話が平行線のままだった

物件所有者からすれば「何で壊したんだよ!」という話になりますが、地主からすれば「うちの土地だし地代払えよ」という話になるので、平行線のままです。

でもこれまでトラブルも一切なく、事前告知もなかったとのこと。

解体している家屋3つのうち、端の1つである持ち主さん(=編集長)とは連絡がつかなかった

と地主さん側は主張されています。他2つはトラブルになっていない点を考慮すると、本当に連絡がつかなかったのではないかとも思います。地代払っていたのに壊したら大問題ですが、13年間地代を払わず音信不通だった場合は、地主さんが気の毒です。

しかし地上権とは、売買も勝手にできますし、物件所有者に優しい法律ですよね。土地も売るくらいの価格で取引しないと、土地には固定資産税かかってきますし地主さんのメリットが薄いです。

時流から考えると…

空き家問題は深刻です。今回の物件もかなり古い木造住宅でしたが、近隣住民からすると、住んでいない古い家はやっぱり火事や地震の際に怖いものです。

そのため、これまでは上物があったほうが有利だった固定資産税も見直しが入っています。古い空き家は更地になったほうが安全だからです。

 

公共の観点で考えると、周囲を空き地に囲まれた物件を所有者の意地で倉庫として維持しているくらいなら、マンションや公園にした方が有効活用できるはずです。

お爺様から受け継がれた意思や、思い出の物件を強引に壊された怒りもあるかもしれませんが、土地の権利が地主さんにある以上、ほどほどのお金で落としどころをつけるのがいいように思います。築64年の木造物件なら、すでに償却は終わってますし。

 今どきは、人が住んでいない古民家相続して、売れないし壊すにもお金がかかって困っている方も多いです。お金をもらって壊してもらえるなら、それはそれで悪い話でもないのではないでしょうか。